〜終戦60周年特別企画〜 ヒロシマ散歩日記
<平成17年8月10日(水)>

 中学の修学旅行で訪れたはずの長崎のことは、実はよく覚えていない。しかしそれ以前に広島は、自分からは一度も足を運んだことが無かった。毎年夏が来ると、決まったように放映される戦争特番を観ながら、一度は行っておかないといけないような強迫観念に、ここ何年も駆られていた。駆られていたのだが、夏は長期休業があるのに何故か忙しく、毎年終戦記念日が過ぎると、“行きたい熱”も醒めてしまう。今年は例年以上に忙しくて、結局夏休みも、長崎の原爆記念日まで毎日出勤することとなったが、このままでは一生行けないような気がしていたので、職場のIT研修会が一段落着いた翌10日、急に有給休暇をとって、発作的に新幹線に乗っていた。
 普段の出勤と、ほぼ同じ時刻に家を出た。地元の姫路駅から広島駅まで新幹線だと1時間強で行けるが、在来線だと4時間もかかってしまう。
 実はクルマかバイクで行こうという計画もあり、それで逆に出発前からしんどくなって行けない年が続いていたので、ちょっと奮発して、やはり新幹線を利用することにした。修学旅行とか、何かのイベント以外で、自分ひとりで意識的に新幹線を利用したのは、もしかして初めてかも知れない。イイトシして、困ったもんだ。
 姫路発の新幹線は少なく、7:40発のレールスターに乗り込む。指定席までの経済的余裕は無く、行きも帰りも自由席、しかも金券ショップで安く買った回数券である。
 小一時間で広島駅に到着。本当に発作的に広島行きを敢行したため、実は全然地理的なことも分かっていない。広島駅から平和公園まで、どう行けばいいのかも分からない。結局新幹線のホームに降り立ってから、原爆ドーム行きの市電に乗り込むまで、20分かかってしまった。
 市電というものに免疫が無い為、車体を見るだけでちょっとした観光旅行者気分になる。行き先や路線がよく分からないまま、とりあえず「原爆ドーム」の文字を頼りに、停まっていた車両に乗り込むことに。降りるタイミングもつかみにくく、車内でもドキドキしていたが、さすがに同じ目的地な観光客が多いようで、助かった。
 道路を車と並行して走る市電から、市内を走るクルマを眺めていると、マツダ車の圧倒的に多いことに驚かされる。さすが広島!である。全く聞きなれない地名の駅をいくつかやり過ごしつつ、車内の路線図とにらめっこ。至って分かり易い「原爆ドーム前」で下車する。他の駅名だと、乗り過ごしていた可能性が極めて高い。
 車内の客で、地元らしき人は一人も降りず、自分も含めていかにも観光客風な人ばかりが下車していた。数名の外人さんも一緒である。そのまま団体旅行よろしく平和記念公園まで同行することに。
 下車すると、すぐに眼前に飛び込んで来る、見慣れた建物。でも見慣れたのはTVモニターの上でだけ。実際に拝むのは初めてである。
 建物全景の映像は、さすがにTVで見慣れたままであるが、実際に近くで見て印象的だったのは、建物自体よりも、周辺にちらばる瓦礫である。半壊の建物を見ているより、崩れ落ちたブロックを見ている方が、衝撃の強さを物語っていて生々しい。更に近づいて撮影しようとしたら、“鉄柵の内側に入ると警報が鳴る”との注意書きが。
 ぐるりと回って眺めていると、米国人らしきカウボーイハットの兄ちゃんが、ツレのホットパンツの眩しいお姉さんと記念撮影をしていた。自分も写真撮りまくっているし、記念撮影自体は構わないが、笑顔でファインダーに収まるお姉さんの気持ちが理解できない。四六時中沈痛な面持ちをしていろとは言わないが。
 動員学徒慰霊塔の側を通り、元安橋を通って中島へ。橋では数人のおじいさんが、何かの募金を募っていた。橋を渡りきると、すぐに“原爆の子の像”が。周囲に花が咲き乱れ、背景の千羽鶴の鮮やかさも手伝って、その辺りだけが浮いたように鮮やかであった。有名スポットだからか、ここでも記念撮影の人は多かったが、さすがに日本人観光客は(無邪気な子どもを除いて)複雑な面持ちであった。この子どもは、佐々木禎子さんと幾つ違いだろうか。
 記念撮影者の邪魔にならないように、像の全体像を収めようと下がってみたら、遠目に原爆ドームが見えた。
 像後ろの千羽鶴を見てまわる。自分も折鶴の一羽くらい持ってくるんだったと一寸後悔。「もう ばくだんが おちないように」「ぜったいに せんそうがありませんように」と幼い字で書かれた、保育所の折鶴束を発見。先年の出火事件を思い出しつつ、「監視用ビデオ撮影中」の看板にガッカリ。なんか寂しい。
 横断歩道を渡って、“平和の灯”の方へ。もう10日だというのに、何かの撮影で、NHKスタッフがカメラのセッティングを行っていた。周囲が明るすぎて、平和の灯の灯りがよく見えない。核兵器が地球上から姿を消す日まで燃やし続けるはずの火であるが、先日のTVドキュメンタリー番組の中で某米科学者の言っていた「その前にガス欠で消える」という言葉が思い返されて、重い。
 遠方に、6日の「原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」で見慣れた死没者慰霊碑と資料館が見えてきた。見慣れたといっても、例によって「TVで」だが。
 慰霊碑に近づくと、なんと6日の式典で使われた菊花がそのまま残されていた。手を合わせようと更に近づくと、それまでポールに絡まっていた日の丸が、急に風にはためき出した。ここでも記念撮影をする人、そっと手を合わせるだけの人、ただ素通りして行くだけの人…。
 同じ地に立っても、人の意識は様々である。
 慰霊碑の間からも、原爆ドームが垣間見られた。高層ビルに埋もれて、年々ドームが小さくなっていくようだと嘆く人もおられるようだが、要所要所でドームが見える造りになっているのに、変に感心してしまった。やはりシンボル的建造物なのだ。菊花の下には式典の際の張り紙も残っていて、衆議院解散でもめている渦中の「内閣総理大臣」氏の上の菊花だけ何故か枯れかけていたのが印象的だった。
 「安らかに眠って下さい 過ちは 繰り返しませぬから」の碑文。自分の中では、どんな衝撃的な原爆体験記を聞かされるより、重い言葉に思える。

 碑文を撮影し終えて、慰霊碑から離れようとした刹那に、菊花を片付けるおじさん達がドヤドヤとやってきた。間一髪である。まだ(総理大臣以外の)花は綺麗に咲いているものも多かったが、選別する余裕も無い様で、花は全て無造作にゴミ箱行きとなっていた。
 そのままの足で資料館へ向う。入館料、大人50円。安過ぎる気がするが、多くの人に見てもらおうという姿勢の表われか。館内資料も数カ国版が置いてあり、読めもしないのに思わず英語版や中国語版のパンフレットも拝借してしまった。
 館内はフラッシュ撮影は御遠慮下さいと書いてあるだけで、撮影そのものは禁じられていない様子。フラッシュさえたかなければいいのかなと思いつつも、展示資料を見るだけで撮影は止めておくことにした。資料館は東館から入って西館へ抜ける構造。原爆の資料館というと、西館の様な、被爆資料や遺品ばかり想像してしまっていたが、新設の東館の資料も興味深く、かなり時間をかけて廻ってしまうことに。途中、先刻原爆ドームで笑顔の記念撮影をしていた米国人カップルを偶然館内で見つけたため、、興味本位で後をついて行きながら見学していった。彼らはどんな感想を持ったのか。英語が堪能なら、話しかけたかったところだが…。
 館内撮影は自粛したといいながら、一箇所だけ撮影。原爆ドーム=広島県産業奨励館の在りし日の模型である。すっかり見慣れた「あのドーム」が、こんな形だったとは。いつも昔の資料は白黒写真で、現実としてイメージが掴み難い感があったが、鮮やかな緑色の模型に思わずシャッターを切ってしまった。精巧に作られていて、被爆前と被爆後のジオラマが並行して展示されているのだが、規模が大き過ぎて見比べにくいのが残念であった。東館でかなり長居してしまった為、メインに考えていた西館を回る頃には少し疲れてしまっていて、あまり真剣に展示物を見られなかった気がする。というか、もう原爆資料は「お腹が一杯」状態だったのである。
 地下でも特別展をやっていたようだが、西館を出た頃には、もう疲れまくっていて回れなかった。帰宅後に、折角足を運んだのに…と後悔したりもしたが、あの時はあれで限界だったのだ。
 でもそのままは帰れない。ひとつだけ見ておきたかったモノがある。あんまり有名なスポットではないかもしれないけれど、この特徴的な欄干の「平和大橋」である。自分の中で、今回の広島行きを決意させた大きな要因である漫画「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」(双葉社)の劇中で、非常に印象的だったこの橋を、どうしても見て帰りたいと思った。
「広島のある日本のあるこの世界を愛するすぺての人へ」自分の中では 「はだしのゲン」以上の衝撃であった。この橋のたもとで…
 帰りの市電に乗ろうとしたら、にわかに雷鳴が轟き、大雨が降り出した。関西の天気予報では「晴れのち曇り」だったが…そういえば朝は急いでいて、広島の天気予報までチェックするのを忘れていた。当然雨具の用意も無く、もう少し降り始めが早かったら、ズブ濡れになっていたところだった。行きはなんともレトロな市電に揺られて行ったが、帰りはまた必要以上にモダンなデザインの車両であった。
 雨の中、慣れない地理の広島駅周辺でチケット屋を探して(コラ)新幹線の切符を買い、そそくさとホームへ。兵庫県民としては、岡山と大阪が「同じ方面」として記載されているだけで、妙に新鮮に映るのであった。
 駅構内で簡易的に遅めの昼食を取っていると、雷の影響で一時停電に。えらい小旅行になってしまった。
 本当はもっと見て回りたかった場所も多いし、原爆関連だけではなく、せっかくなので広島城(跡)や宮島も見に行きたかったが、雨も降り出したし展示内容で重く疲れたので、そんな元気は無かった。返す返す勿体無いが…。
…まぁ、元気が無かったとか言いつつ、オマケとして、こういった店は一応チェックして来てはいるのであるが(爆)
佇まいは大阪の店に似ているが、中身は姫路と大差なく、神戸の方が充実していた。どちらにしろ、夏コミ前の店内は非常に寂しいものであったが。
…って、何のレポートやねん?!

平和公園のすぐ近くに、こんな店が林立しているのも、今のヒロシマが平和な証拠っていうか、
お後がよろしいようで。。。

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